水素材料先端科学研究センター

研究センター概要

水素素材先端科学研究センター センター長 杉村 丈一
水素素材先端科学研究センター センター長 杉村 丈一

エネルギーと地球環境の問題は、経済状況や社会情勢に左右され混沌としていますが、人類が向かうべき方向が脱炭素化と再生可能エネルギー導入であることは揺るぎなく、水素が果たすべき役割は極めて大きいと言えます。

国の第4次エネルギー基本計画に引き続き、第5次エネルギー基本計画においても、2030年に向けたわが国の重要な政策の一つとして、「水素社会実現に向けた取組の抜本強化」が挙げられています。水素普及のためには、エネルギー変換の心臓とも言える燃料電池技術の発展だけでなく、燃料電池等で使う水素を、安全に「蓄え」「運び」「供給する」技術を確立し、それらの経済性を向上させることが必要不可欠です。また、次世代自動車分野、エネルギー分野における水素関連技術の国際競争力強化はきわめて重要です。

水素を利用する上で重要なことは可燃性ガスとしての安全確保ですが、これと同じくらい重要なことは水素が及ぼす材料特性への影響です。水素はこの世に存在する元素のなかで最も小さいため、あらゆる物質に侵入し、場合によってはその物質の性質を変えてしまいます。多くの鉄鋼材料はいわゆる水素脆化という現象のために強度が低下します。またパッキンなどガス漏洩を防ぐためのゴム・高分子材料は、高圧の水素のもとで大量の水素を吸収し、それが原因でさまざまな損傷が生じることがあります。また面と面が摩擦するような部品では、摩擦や摩耗が水素に影響されます。水素を蓄えたり運んだりする機器では、金属材料やゴム・高分子材料や様々な摩擦材料がたくさん使われますので、機器を適切に設計するためには上に述べた水素の影響について、基本原理を正しく知り応用することが必要です。また水素ガスの圧力や温度に対する性質の変化も正しく知る必要があります。

水素を上手に使いこなせるようになることが、人類と地球環境を救うことにつながります。一方、水素が普及していくためには、今後の経済活動のなかでの実現可能性を確保することが必要です。すなわち、水素の機械やインフラをより安く、かつ地球環境への負荷を低く作れるようにしていかなければなりません。

九州大学水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)は、これらの社会的要請に応えるべく、水素を安全かつ効率的に使うために必要不可欠な技術分野、すなわち材料と水素の研究を行っています。これらの研究では、高圧ガスの実験技術、物質の評価技術、高度な分析技術などを要し、また材料ごとに時間をかけた試験を念入りに行っていく必要があります。技術は一日にして成らず。長期的な研究方針のもと、根気強くひとつひとつの課題の解決に取り組んでいます。